年金なんでも解決塾

難しそうな年金を、分かりやすく解説します

マクロ経済スライドとは

賃金や物価はその年その年によって変動するものであり、例えば1150円のペットボトルが300円になったとします。その一方で年金額が変わらなければ、300円のペットボトルを買おうという購買意欲も湧いてきません。したがって、賃金や物価が上がれば、それに合わせて年金額も上昇させる必要があります。

 

しかし、上昇する年金額を支えているのは現役世代であり、少子高齢化で支え手が少なくなっていく中、賃金や物価の上昇と同じように年金額を上昇させていては、年金制度が立ちいかなくなってしまうことは容易に想像できます。そこで例えば、賃金が1%上がったならば本来は年金額も1%上がるところ、「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」を差し引いて、0.7%の上昇にすることとしました。

 

この、少子高齢化の進展に応じて年金額の伸びを抑制する仕組みを「マクロ経済スライド」といいます。マクロ経済スライドはあくまで「年金額の上昇の伸び幅を縮めるもの」ですので、マクロ経済スライドそのものによって年金額が前年より低下することはありません。ただし、マクロ経済スライドの前提となる賃金や物価が低下すれば、それに応じて年金額は低下します。

 

マクロ経済スライドが導入されて約10年ですが、実際にマクロ経済スライドが発動されたのはわずか1回です。つまり、平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)が差し引かれない状況が続いており、いわば「ツケ」がたまっている状態です。

 

そこで平成30年度から「キャリーオーバー」制度が導入されました。これは「ツケ」をまとめて払うというイメージです。賃金の上昇が1%であるとすると、年金額は「1%0.3%=0.7%」上昇するところ、仮に前年にマクロ経済スライドを発動しなかったとすると、前年調整しなかった0.3%を翌年に繰り越して調整し、年金額は「1%0.3%0.3%=0.4%」になるというものです。